パターン、Wiki、XP

新人技術者に贈るネットを理解する為の教科書5冊 - アンカテ

とってもおもしろい本を読みました。

この本については、タイトルだけは知っていたのですが、いまいち、なんのことか分からず、スルーしてました。きっかけは、上のエントリーで、「ネットを理解する」と題して5冊が紹介されているのですが、いずれもピンポイントを突いた本質的な本ばかりで、それで、思わずアマゾンで目次を確認したことがはじまりでした。もうね、目次見て、はい、これはおもしろい、みたいな。

上の、essaさんの選定ですが、テーマは「コラボレーション」でしょうかね。「ネット」っていうのは、通信のことであるから、TCP/IPだし、その上で実現されているWebであり、そこで情報を安全にやりとりするためには暗号化技術が欠かせないし、そして、ネットにつながってみんなで何かやる、コラボレーションしてなにかを生み出す、つまり「創造」ということについて、本書はテーマにしているように思います。

ほかの書評の繰り返しになっちゃいますが、一応、説明しておかないと分からないと思うので、パターンというのは、プログラミングで使われる「デザインパターン」のこと、Wikiというのはウィキペディアとかの動いているWikiというシステムのこと、XPというのは、エクストリーム・プログラミングという開発手法のことです。

これが、いずれも、建築家のクリストファー・アレグザンダーという人の思想に源流を持つ、という、そういう内容の本です。

こういってしまうと、簡単なんですけど、内容はそれほど簡単でもないです。適度なページ数なのですごくよくまとめられていてすらすら読めるんですけど。

僕は、たまたま、いま、「アイデア」についてものすごく考えていて、それはつまり、実験とか、発明とか、創造とかいうことでもあって、だから、いろいろ重なる部分があったんですね。そもそも、この本は副題を「時を越えた創造の原則」と言います。クリストファー・アレグザンダーは、そして、その後継者である人たちは、なんとかして、この「創造」というプロセスを、そのしっぽを捕まえようとしているんですね。

でもそれはなかなか難しいんです。まず、当のアレグザンダーが、果たしてうまくいったのか、というのは微妙なところです。そして、ソフトウェア開発においても、旧来の、XPでもアジャイルでもない、普通の建築手法の応用みたいなことをやっているのが大半なんではないかと思われます(詳しく知りませんが)。

しかし、この辺りをちょっと考えてみると、アレグザンダーが取り組んだ建築というのは、当たり前ですが、「ハード」であり、なかなかこの方法は難しかったのではないかと思われます。彼が理想とした「自然都市」にしたって、たぶん、相当な年月をかけて形作られてきたのだと思いますし、なかなか、ソフトのように、すぐにつくってすぐにちょくちょく変更したりできないという制約があったのではと思います。

そして、ソフトの世界でこれが比較的成功しているのは、やはり、ソフトであるということと、ネットの誕生ということが大きかったのではないかと思います。ソフトであるということ自体も、ネットを介するということにしても、いずれも、物理的制約を受けない、というのは、大きいです。

それから、アイデアとか、創造ということに絡めていうと、この手法は、できれば、何か比較的新しい物を生み出していく、そういう過程に向いているやり方であり、もうすでにあるもの、決まり切っている物に当てはめても、あまりうまくいかないのではないかな、とも思いました。

ソフトウェアでいうと、なにか、ベンチャーのような、これまでにない、新しい果敢な試みをやろうという時などにはうまくいくけど、いわゆる受託開発のような、これから作るものがあらかじめ既に決められてしまっているような時には、あまりうまくいかないのではないか、と思いました。

あと、「創造」ということですが、アレグザンダーは、「無名の質」ということをその理論の中心に据えていますが、これが、名付け得ないということだけあって、結局、なんなのか分からない、みたいに言われてますが、僕はそれが、創造ということの本質だろうと思っています。

常に、動いていて、ひとときもとどまることなく、常に新しい物を生成し続ける泉のようなものです。名付けた物はいわば止まってしまう。この本では、建築にしろ、ソフトウェア開発にしろ、「パターン」と呼ばれる要はベストプラクティスみたいな原則がいくつもあるんですが、それもやはり永遠ではないと思うんです。

たとえれば、それは動植物の進化みたいなものかも知れない。ものすごく長い時間の中でそれは形作られてきて、いまの、僕たち人間や動物や植物というものがある。現時点ではだから、これがベストプラクティスです。でも、また何万年かして、徐々に環境が変われば、それはたぶん変化(進化)していくでしょう。

永遠なものがただ一つあるとするならば、逆説的ですが、それは、「永遠でない」ということ、進化していくという運動そのもの。だから、時を越えた創造の原則である無名の質は、名付け得ない、ということになります。

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

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UNIXという考え方―その設計思想と哲学

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